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★吉田博詞さん(37歳・東京都台東区浅草/株式会社地域ブランディング研究所代表 )
「魅力ある〝まち〟には活気が宿る…」まちの隠れた魅力を見つけ出し、より価値のあるまちへと地域をブランディング……行ってみたい、住んでみたい〝まち〟づくりを提案。そこで暮らしている人では気づけないようなまちの魅力を再発見し、国内のみならず世界に向けて誇れる日本を発信しています。
◆地域ブランディングとは
現在は、生まれ故郷の広島を中心に、日本各地の地域をブランディングしている、吉田社長。広島では特産品の牡蠣の水揚げや、被爆地域のサイクリングツアーなどのプランが展開されています。牡蠣の水揚げでは、観光客向けに牡蠣漁の体験ツアーを組んだり、サイクリングツアーでは『Pieceルート』と題して、平和史跡を中心にルートを辿って、被爆から70年経ち力強く復興した広島を実感して貰っています。「僕らは特に何かを生み出している訳ではありません。元々地域の人たちが大切にして来たストーリーを紡ぎ合わせて編集し、興味を持ってもらえるようにプログラム化しているんです」形の無いものに価値を見出して、稼げるまちを作り上げる……地域活性を目指す、地域ブランディングの仕事が見えてきました。
地域ブランディング研究所の仕事の一つに、ガイドブックの制作があります。一つの地域を2、3ヶ月かけて徹底的に調査し、独自の視点でまちの魅力を最大限に引き出します。百聞は一見に如かず!ネットの情報である程度目星をつけて調査を行ないますが、実際に足を運ぶと良いとされている物があまり良くなかったり、逆に今まで取り上げられて来なかった物が魅力的だったりという、結果も。とにかく自分たちの目で見て感じて実際に決める、まちの魅力、価値を最大限に引き出すには時間を惜しみません。
◆旅から学んだ学生時代
まちづくりの原点は学生時代にありました。筑波大学では『都市計画』を学び、在学中には、日本のみならず世界各地を旅したという、吉田社長。東京を出発し、ヒッチハイクで、富士山〜能登半島〜紀伊半島〜四国一周〜九州一周〜広島と、3週間かけて廻ったこともありました。さらにイタリアでは18の都市を巡り、それぞれの強烈な個性に感銘を受けました。「日本のように、表情がどこも同じようなまちは一つもないんです」駅前には居酒屋やパチンコ、コンビニ……利便性を優先させた日本の良さも、地域の個性を発揮する上では魅力を損ねてしまう側面があります。自身が見て体感した感覚を大切にする姿勢は、この頃に培ったのかもしれません。
◆成長に不可欠な当事者意識
起業のきっかけはフリーランスでやれたら良いなぁ〜という、軽い思いから。前職の『株式会社地域活性プランニング』では、主にドラマや映画のロケ誘致を行なっていました。メディアに取り上げられることで観光客が増え、地域活性を促す成果を上げました。そこでの経験をベースに30歳で起業、当時は後輩とインターンの学生と3人で、6畳一間のアパートで、寝食を共にしていたそうです。
現在は60名を越えるスタッフを抱えるまでに成長し、次なる目標も見据える吉田社長。しかしそのためには、人材の育成も大切な使命です。「やりたいことで、ご飯が食べられる若者を増やしたい」その為に必要なスキルをこの環境を通して学んで欲しいと思っています。社員たちには圧倒的な当事者意識を持って「とりあえずやってみろ!」と、吉田流で奮起を促します。
◆これからの日本
政府は観光立国推進により訪日外国人旅行者数を2020年に4,000万人、2030年に6000万人にすると目標を掲げています。吉田社長は、このインバウンドのチャンスを各地域に生かして欲しいと切に願っています。今も昔も、観光客誘致問題で頭を抱える日本、現在浅草では商工会議所からの依頼を受けて、外国人向けに芸者体験を展開しています。料金設定から予約方法、さらには芸者遊びの構成に至るまでをプロデュース。自社のガイドが同行し通訳を勤め、日本の伝統『芸者遊び』を世界に向けて発信しています。
今年で平成も終わり、もうじき新元号に変わります。この平成という時代を吉田社長は、次の時代への移行期間と捕えています。人口が増え続けることを前提とした昭和の産業モデルから、次の時代へどうやって生き残るのかを模索し、狭間で揺れ動いていた平成……新元号ではより外需を受け入れ、舵を切ることが日本の生き残る道だと考えています。6月にはG20、9月にはラグビーWC、2020年にはオリンピック、さらには大阪万博など、世界と接点をもつ大きなイベントも目白押しです。IR(カジノ)法案が施行されれば、より多くの外国人が日本を訪れます。現在約13兆円の売り上げを誇り、外貨獲得首位の自動車産業を2030年には、インバウンド消費を15兆円にして、日本で一番の輸出リーディング産業にしていこう。という、戦略も国を挙げて取り組んでいます。新しい試みとして、富裕層向けにサービスの展開を考えているという、吉田社長。良いものをより安くというデフレマインドではなく、高くてもわざわざ行きたくなるような、プレミアムな商品開発が至上命題です。
今後の目標は、世の中に価値を提供出来る人材の輩出。自身が20代の頃、先輩方から教えて貰ったノウハウのバトンを今度は次の世代に伝えたい。地域の架け橋から日本の架け橋へ。吉田社長の挑戦は始まったばかりです。
(取材・構成 内藤英一)