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「キミがいてくれて本当によかった。そう言ってくれる人が多くいる人生にしたい」。

2021.06.012021.06.01
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★株式会社Colorful System IT事業部・家塚一輝さん(兵庫県尼崎市)

生まれ育った岸和田でだんじり祭に馴染めず、目指したプロミージシャンの道で挫折し、一発逆転を狙った日本半周の旅でも収穫がなく。20代後半にさしかかったころ、現在の職場と出会いました。曰く、「すべり止めで受けた会社だったんですけどね(笑)」。今をときめくベンチャー企業でSEというポジション。入社間もないのにもかかわらず社内の中心的存在で、会社の顔になりつつあります。

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◆命名由来は親に聞いてください

阪神尼崎駅から庄下川に沿って北へ歩いて15分ほど。閑静な住宅街の中で、本社はひときわ異彩を放っていました。町工場をリユースした社屋で、1階で扱っているものもこれまたリユースのキャンプ用品の数々。聞くところによると代表の小玉紋子さんのアウトドア好きが講じて、つい最近この事業に着手したばかりなのだとか。ゆくゆくは店舗を少しずつ増やし、IT事業部とキャンプ事業部の2本柱で事業展開していく考えです。

 

家塚一輝さんはIT事業部所属の28歳。去年1月にSEとして入社。食品メーカーや電器メーカー、後払いシステムなどのアプリ開発に着手しているほか、各種WEB関連事業も多々。新型コロナへの対応から、仕事はテレワークが中心です。

 

だからというわけではないのでしょうが、家塚さんは名刺を持っていません。理由は、「SEに名刺は必要ないんですよ」。あらら、せっかくいい名前なのにもったいない。だって、「一」番「輝」いてるんですよ。「もう何でこんな名前にしたのか、親に聞いてください(笑)」と照れる家塚さんですが、取材を進めているうちに決して名前負けしていないことがわかってきました。

 

◆眉毛が濃い理由

大阪府岸和田市出身。岸和田といえばやっぱりだんじり祭。「いやぁ、小さい頃からスポコンというものが苦手でして(苦笑)」。というと?「なかなか輪に入っていけなかったんです、地元の人たちのテンションの中に」。えー、こんな人もいたとは。確かに意外なカミングアウトではありましたが、確かに誰もがみんなだんじり好きとは限りません。決めつけはよく ありません。

 

高校時代は「何をやっても長続きしないタイプ」だったのだそう。だのに、「恥ずかしがり屋のくせに、目立ちたがり屋でもあったんですよ(笑)」。なんじゃそら。そんな悩み多き家塚少年が高校卒業後目指したのは、音楽の専門学校でした。

 

▲家塚さん提供

 

ロックバンドとしてだけでなく、アコースティックなソロ活動も。充実した2年間ではありましたが、「夢は夢として、このまま好きなことを続けていってもいいのか、やっぱりちゃんとした仕事に就くべきなのか、そんなジレンマに陥ってしまったんです」。このままではいけないし、何も変わらない。理屈ではわかっていても、手段がわからない。そして思い立ったのが、自転車の旅でした。お金も持たず、「自分を追い込んでみたかったんです」。意志の強さは、真っ黒で引き締まった眉毛にも表れています。

 

◆自分の居場所みつかる

▲家塚さん提供

 

旅先では路上ライブで小銭を稼いだり、あなたの夢は何ですか?と道行く人に問いかけて「夢集め」をしてみたり。ライブを通じて外国人と親密になったり、自転車を欲しがった見ず知らずの他人に譲ってしまったり。大阪から東京、果ては青森まで足を伸ばし45日間の旅は終了しました。「残念ながら、これだというものは見つかりませんでした」。

 

撃沈かと思いきや、「あ、ありました(笑)!。その後大阪へ帰ってきてその話を友人にしたんですが、とある教会で主任牧師をしていた人こそ東京で親しくなった外国人のお父さんだったんです!。すごい偶然でした!」。驚くべき突破ファイル。決して無駄ではなかった全国行脚。これがきっかけで、家塚さんはクリスチャンへの道へ。このことが、その後の人生に大きく影響を与えたことは、いうまでもありません。

 

▲家塚さん提供

 

思いもしなかった聖書との出会い。どちらかというと、今までは自分のことは信じられても他人を信じることができなかった家塚さん。それが、人を信じ仕えることで祝福されることにも気づき、「やっと自分の居場所が見つかった気がしました。その後、複数の会社でサラリーマン生活を経験し、仕事が思うようにいかなかった時も、教会で頑張れてるんだから仕事も頑張れるはずだと、割り切れるようになりました。そして、人を信じれば必ず結果はついてくるということを身をもって経験しました」。いつしか教会でもリーダー的な存在となり、自分には一生縁がないと思っていた結婚にもこぎつけました。

 

◆夢に向かって人生を捧げる

現在の社員数は大阪・東京合わせて約20人。この中には、リファラル採用によるスタッフも。「どうせ仕事をするなら、知ってる者同士のほうが気心が知れていますし効率的ですから。会社にとって離職率も下がります」。現に、奥さんの弟も家塚さんの紹介で入社し、営業スタッフとして活躍中だそう。ということは、紹介料たくさんもらった?「そこは想像におまかせします(笑)」。

 

「仕事に対して前向きに考えられるようになりました」と、すっかり自信を取り戻した家塚さん。これまでは指示待ちタイプだったのに、会社に対して何かできないか自分から動くことも多くなりました。その一環として社内の評価制度を提案し、スタッフの給与の可視化を実現。「正しい行いをすることに疲れ果ててしまわないようにしましょう。失望せず、あきらめずにいれば、やがて祝福を刈り取る日が来るからです」という聖書の一文こそ、今や家塚さんの大きな支えになっています。

 

かつてアルバイトだった男子が、家塚さんのようになりたいと慕い社会の第一線で活躍している近況を聞くと、「夢に向かって人生を捧げている人って、本当にすごいと思います」。いやいや、アナタもそうだと思いますが。今、一番輝いているのはこの人。やっぱり名前負けしていませんでしたね。

(取材・構成/池田厚司)