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「事業拡大よりも大切な、全社一丸の本当の意味」。

2018.10.192018.10.19
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★河野尚樹さん(大阪府堺市/ショウヨウ株式会社代表取締役)

オールカタカナの社名は、4年前に急逝した先代社長が長男・次男それぞれの名前の一部から命名。大手空調メーカーの機器販売や保全修理からスタートした会社は、今や取引先は約70社・400人以上のスタッフを抱える人材派遣会社へ成長を遂げました。今年、くしくも創業40周年を迎えました。親から子へのバトンタッチ。そして新たなリーダー誕生。時代の変革は始まったばかりです。

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◆お弁当づくりに込められた思い

「たとえ私がいなくても、社員が自分の意志で動けるような会社でないと。任せたらとことん信用しますし、一人ひとりの力が結集されれば結局会社全体のパワーとなるんですよ」。これこそが会社の統一スローガン「全社一丸」そのものであり、先代社長の急逝により経営権を突然任された4年前の自分自身と重ね合わせた結果なのでしょう。

エネルギッシュでパワフルな語り口調。もっと話していたくなる論理的思考が印象的です。起床は毎朝5時。17歳と14歳のわが子のお弁当をせっせとつくる毎日。しかも、子どもたちそれぞれの嗜好に合った献立ありき。え、ということは2種類のお弁当を毎日?「やってみるとすごく楽しいですよ(笑)」。

ちなみに奥様は現役ナース。「仕事・家事・育児と、毎日忙しくて大変そうだったんです」。自宅からは毎日約3㎞をジョギング通勤。「数年前まで100㎏を超えてたんですよ(笑)。それがきっかけでタバコもやめました」。常日頃、“少し無理をして、家庭も大切にして、仕事もきちんとする”という自身のポリシーそのままのワークスタイルを継続しています。

◆リーダーシップに目覚めた日

小学生のころはマンガを書くのが大好きな少年でした。小学6年生当時ですでに体重75㎏。さすがにこれではいかんと一念発起し、中学に入ると部活でテニスを選択。「マンガおたくでした(笑)。不思議ですよね。住む世界が変わると友達のキャラは変わり、環境も激変しました」。

リーダーシップにも目覚めたのもこのころ。テニス部ではキャプテンを務め、大いにリーダーシップを発揮しました。自分のモチベーション次第で、人も環境も変る。そしてやればやるほど、人の頂点に立ちたくなる。そんな気質は、このころから根付いていたのかも知れません。さらに、高校在学中にハンバーガーショップでアルバイトしていた時も、高校生では最高ランクといわれるトレーナーにまで上り詰めたことも。「アルバイトの掛け持ちというのが嫌で、ひとつのところでじっくり長く勤めたかったんです」。

工業高校卒業後は、親の勧めもあって空調をメインとする専門学校へ。「2人の息子たちには、手に職をつけさせたい」という先代社長のわが子に対する思いは、今日の礎を築くきっかけでもあったのです。

◆肉親の苦言があったからこそ

専門学校の2年間では、幅広い年齢層の人たちとのつきあいが刺激的でした。「10代だけでけでなく20代・30代もいます。育った環境もまちまちです。今まで見えなかったものが見えてきて、見聞が広がりました」。

車や新しいジャンルの音楽に目覚め、スノーボードにのめり込む日々。結果的に、20代中ごろまで遊びに熱中していたのですが、同じ仕事をしていた2歳下の弟から「もっとちゃんと働いてくれと釘を刺されたんです(笑)」。何をやっても人一倍熱くなり、常に上を目指したい性格。それが故に、肉親の苦言は堪えました。さらに、このころ知り合った現在の奥様と身を固めることにもなりました。

さらに、当時社長だった父親からも痛いひとことが。それは「お前は俺と違って人脈がないと言われました。もうめっちゃ悔しかったです。今にみていろ、と火がつきました」。以後、この悔しさをバネにしてさらに発奮し、のちに見事克服。「でも今思えば、10代で経験してきた色々なことが、経営者として必要なリーダーシップが養われたのかも知れません」。

◆自身も企業もたくましくあるために

28歳の時に出会ったのが、大阪青年会議所でした。目的は、ほかならぬ「人脈をつくること」。大阪の経済のみならず、歴史や文化などについてもトレーニングや啓蒙活動を行う一方で、本来の仕事もこなしてきた熱い12年間でした。「大阪の未来共創室」常任理事の大役を果たし、40歳という任期も満了。そして、二代目社長の正式誕生。「社長として周りが認めてくれるのか、父の死を哀しむのも束の間、頭の中はそんな不安でいっぱいでした」。

去年、厚生労働省が認定する「優良派遣事業者認定証」を取得。全国でも168社、大阪ではわずか18社のみという希少なもので、これまで積極的に改革してきた行動力や社内での仕組みづくりなどが、高く評価されました。「どちらかというとこれまではワンマン経営でしたが、これからはそんな時代ではありません。事業をやたら拡大して利益を追求していくのではなく、常に時代に則したガバナンス強化が先決です」。

目標は1日2万歩。距離にするとどのくらいになりますか?「12㎞くらいでしょうね(笑)」。いざという時の危機管理の強化もさることながら、常に健康であることも信頼されるリーダーの条件。4年前、先代社長は人脈の必要性だけでなく健康の大切さも身をもって、次期社長に伝えたかったのかも知れません。

(取材・構成/池田厚司)