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「自分たちの定めた目標が、お客様の購買意欲と合致する時が一番うれしいです」。

2017.11.272017.11.27
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――坂谷志馬さん(大阪市都島区/42歳・ローソン港晴2丁目店店長)

30代のころ、ビデオカメラマンを10年間務めていたというユニークな経歴を持つ坂谷志馬さん。アルバイトを皮切りに、つい最近ローソン港晴2丁目店店長に昇格しました。コンビニという24時間営業のハードな職場環境。もうすぐクリスマス。そして歳末、やがてお正月。繁忙期を目前にして、店長会議の終了を待ってお話をうかがいました。

 

◆厄年にも屈しない飄々としたキャラクター

坂谷さんと会ったのは、大阪市淀川区に本社を置く株式会社リュウシンの会議室。同社はローソン本体と強力なパートナーシップにより、大阪市内北部の17店を店舗展開。最近では、大阪市営地下鉄構内の売店もローソンへ移行しつつあり、さらに勢力を拡大しつつあります。
そんな会社のことを、「アットホームな雰囲気で、とても居心地がいいんです」と語るのが坂谷さんです。京都出身の42歳。厄年ですねの質問にも、「気にしたことありません(笑)」と笑い飛ばす、飄々としたキャラクターが印象的です。

高校を卒業後、プログラマーとしてサラリーマン生活を送ったのち、友人に誘われるまま自分たちで会社を興し、ビデオカメラマンに。演歌や釣りの番組を担当したこともありましたが、その後会社は尻すぼみに。「この先、資格でもないとやっていけないと思って」、特殊自動車の免許取得を目指しながら深夜のアルバイトを始めたのが、ローソンでした。

 

◆刑事ドラマさながらのシーンが

「免許を取るついでのつもり」で始めたアルバイト。初めてのコンビニ勤務。しかも深夜。場所が歓楽街の中心にあることで、昼夜問わず独特の雰囲気を醸し出していました。24時間眠らない街でのアルバイト。酒に酔った客が入店してくるのは日常茶飯事。ほとんど下着同然でやってくる怪しげな女性や、追われて血を流しながら逃げ込んでくる男性など、刑事ドラマさながらのシーンもあったそうです。それでも、「慣れますよ(笑)」。

常に冷静沈着。物事にも動じない性格。何よりも仕事を覚える速さはピカイチでした。ふと気づいたら、クルーの中でもベテランの域に。そして当時の店長が退職するのを機に、正社員になりました。「見てくれている人はちゃんといるのだなあと、すごくうれしかったです」。
ついでのつもりだったアルバイト。当初の目的だった自動車免許取得の件は、「いつしかすっかり忘れてました(笑)」。とはいえ、深夜勤務がメインだったハードな環境でのアルバイト経験が、多いに役立ちました。

 

◆のしかかった重い責任と苦い経験

正社員から店長になるまで、さほど時間はかかりませんでした。コンビニという職業を考えると、「逆にそれくらいでないと、やっていけないんです」。現在は大阪市港区港晴2丁目店の店長を務め、数人のクルーを取り仕切っています。

かくいう坂谷さんですが、一度降格を余儀なくされた苦い経験も。「仕事が一気に増えて、やらないといけないことに手が回らなくなってしまったんです。与えられたことだけきっちりやっていればいいアルバイト時代とは、まったく違いました」。店では数々の修羅場を経験してきた坂谷さんでしたが、ことマネジメントとなると未知の領域だったのです。
この苦い経験は、大いに役立ちました。店長という意識も高まりました。どのような商品が受け入れられるか、どうすれば購買意欲が高まるかなど、前向きに考えるようになりました。「自分たちが考えたことが、お客様の購買意欲につながった時ほどうれしいことはありません」。のしかかった重い責任と苦い経験が、坂谷さんを確実に成長させていったのです。

◆この時期のオススメは「黄金チキン」

坂谷さんには、6年前から同居している女性とそのお子さんが3人います。上は中学3年生から下は小学5年生までで、いずれも坂谷さんにすっかりなついていて実の親子同然なのだとか。休みの日には、徹底した家族サービスに余念がありません。年間パスポートでUSJを屈託なくたっぷり楽しみ、ディズニーランドで幸せを絵に描いたようなひとときをすごしました。「山にもよく登りました。金剛・葛城など、関西の山はひと通り。最近、大山にも登りましたよ」と、アクティブな休日をすごしています。

「ビデオカメラもコンビニ仕事も、やる気があれば誰でもできます。資格があったほうがいいとは思いますが、前向きなのが一番でしょう」。これから大きくなるお子さんもいて責任重大かと思いきや、「全然(笑)。仕事にこだわりがなければ何とかなりますよ」という天性の楽天的な性格も幸いしている気がしてなりません。

普段よく利用するコンビニは、格好の勉強材料だそう。「特に商品POPです。配置などで商品の売れ行きが大きく左右しますから」。200種類もあるあるタバコの銘柄を覚えて、顔見知り客にサッと出せるよう努力も惜しみません。利用客を待たせないのがコンビニの神髄だからです。

もうすぐクリスマス。坂谷さんのおすすめは、「黄金チキン。どのコンビニのチキンにも負けませんので、ぜひご賞味ください(笑)」。店長会議と取材を終えて駅へ向かう背中は、家族を背負うべく店長としての自覚と自信に満ちあふれていました。

 

(取材・構成 池田厚司)