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「当たり前のことを、当たり前にやるだけ。」

2019.12.102019.12.10

★赤羽隆志さん(43歳/鉄板串焼酒場 赤羽家 経営)

2018年の飲食店の倒産件数は657件という衝撃的な数字が「帝国データバンク」の調査により明らかになっています。倒産の原因は「販売不振」が最も多く、なかでも個人経営の酒場が214件を占めているとのこと。大手飲食チェーンが価格競争に乗り出している昨今、個人経営で店を続けていくのはそう簡単なことではありません。しかし、大阪市中央区・心斎橋という繁華街にありながら7年も黒字を出し続けている居酒屋があります。赤羽隆志さんが経営する「鉄板串焼酒場 赤羽家」です。

 

◆死ぬ気で働いたから今がある。

 

赤羽さんは24歳から9年間、さまざまな店舗を経営する会社で働いていました。

「社長と2人だけの会社だったので、自分の意見はたくさん採用してもらえてやりがいはありました。経営についてはまったくの素人なので独学で勉強しては実践に移す日々でしたね」。

飲食店のプロデュースも手掛けていくうちに飲食店のおもしろさを知り、いつしか「自分で店を開こう」と思うように。しかし、開業をするための知識は豊富でも料理についての知識はゼロ。「繁盛している店で修業をしよう」と決意したのは、32歳の頃でした。

修業先に選んだのは、大阪で知らない人はいないと言われる鉄板焼きの有名店。
「料理の見せ方といい接客といい、すべてが理想的な飲食店です」と話す赤羽さんは、ここでイチから新人として働くことに。もちろん、周りは年下ばかり。それでも、32歳で新しい世界に飛び込むことへの不安はなかったと言います。

「店がやりたい。ただその一心でしたから、そんなことは気になりませんでした。絶対にモノにするぞという気持ちでひたすらがむしゃらに働きましたね」。

2号店の店長を任されたときには睡眠時間が3時間を切るときもありました。しかし、不思議と辛さは感じませんでした。

「すべて自分のためになるので、大変だと思ったことはありません。むしろ、死ぬ気で働かないと意味がない。やりたいことを貫くために、必要な時間だったんです」。

そうして3年間の修業の末に、社長から「お前なら言うことがない」と太鼓判を押され、2012年に「鉄板串焼酒場 赤羽家」をオープンしたのです。

本当はもう少し早く独立するつもりだったけれど、まだまだ修業が足りないと思い3年間働きまくったそう。

 

◆ラッキーは一生続く。

芸能人も多数通っている人気店に。

開業1年目から黒字を出すことに成功した赤羽家は、7周年を迎えてもなお売上をキープしています。その秘訣は「当たり前のことを当たり前にやること」だと赤羽さん。

「お客さまにとって気持ちの良い接客を心がけるとか、質の高い料理を出すとか、掃除をきちんとやるとか、当たり前のことを徹底的にやる。それが何より大切だと思っています」。

人気は「アスパラ豚巻」と「しいたけ肉詰」

とはいえ、飲食店といえば「水商売」。客の都合によって売上が大きく左右される仕事です。ときには、普段より客数が落ちる日も。しかし赤羽さんは「人が少なかったら、その分、一人ひとりに接客できる時間が生まれるのでラッキーじゃないですか」と笑いとばします。「座右の銘は『ラッキーは一生続く』なんですよ。バカでしょう?」とあっけらかんとした表情。独立を決意した32歳から今に至るまで、身のまわりに降りかかるすべてのことを前向きにとらえてきたからこそ、今の赤羽さんが、そして赤羽家があるのです。

 

◆次なるステージへ。

 

そんな赤羽さんは現在、2つの目標を掲げています。

1つは従業員教育。

「今は30歳と42歳の2人を社員として雇っています。自分がやりたいことをやるだけではなく、これからは彼らの将来も考えていかなければいけません。人生を背負っていますからね」。

そして2つめは――。

「2店舗目の開業に向けて動き出しています。まだ場所は明確には決まっていないんですが、夢は広がります」。

43歳、赤羽隆志さんの挑戦はまだまだ続くのです。

酒蔵に特注で作ってもらっている屋号を冠した日本酒も人気。

 

(取材・構成/内川美彩)

鉄板串焼酒場 赤羽家
大阪市中央区東心斎橋2-5-32 みわビル1階
☎06-6213-0500
営業時間:18:00~翌5:00 ※日曜は~24:00
定休日:なし

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