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堺市津久野、昭和初期からものづくりが盛んな地域で派遣事業を行う株式会社ケイエムシー。その専務取締役である小川さんに、創業一族であり遅刻常習犯(?!)だったバイト時代から専務取締役になるまでの紆余曲折をお話しいただきました。
☆ ☆ ☆
◆いじめから逃れる方法として初めたんです
ピシッと着こなしたスーツからもわかる、分厚い胸板から放たれるやさしい語り口調に似合わない一言からインタビューは始まりました。
小学校時代のいじめに対抗しようと始めた空手で心身を鍛え、中学から高校生までは柔道に向き合ってきた小川さん。
高校時代にはプロレスの面白さにもハマり、プロレスラーになりたい!と密かに考えるようになっていました。
◆人との出会いが道を作ってくれた
高校卒業後は就職難の時代、親族企業でアルバイトをしていましたが、朝に弱く、なんと遅刻常習犯。そんな小川さんを見かねた若い社員さんが、「みんなに迷惑かけてるの分かってるのか?」と、小川さんをピシャリ!
「あんなストレートに怒られたこと無かったので、響きました。今のままではいけないって気付かされました」。
その後は即断即決、なんと一ヶ月後には柔道部のある警備会社に仕事先を決め、東京へ。
警備会社で働きつつ、柔道で鍛錬し、憧れだった全日本プロレスの門を叩くのですが、プロレス団体の入団には至らず、夢破れて大阪に戻ってきた小川さん。
親族の会社に勤めることになるのですが、それが今のケイエムシーのグループ会社である株式会社広栄。お祖父様の時代から世界のシマノの協力会社としてモノづくりを58年間続けてこられた会社です。
株式会社広栄では当時100人近くの派遣を受けており、小川さんが配属されたのは、外部に委託していた派遣事業をグループ内で運営するための会社、株式会社ケイエムシーを立ち上げたタイミングでした。
当時は、派遣法が制定されてまもない派遣事業のまさに過渡期。派遣業についてなにも知識が無かった小川さんに、競合企業であるはずの同業者さんが助け舟を出してくれます。
「登録表や書類の書き方から、管理や営業ももちろんわかってなかった。そんな時に敵に塩を送るじゃないですけど、派遣のいろはを教えていただいて、今もとても感謝しています」。
そんな助け舟もあり歩み出した派遣事業はその後10年間、派遣法の度重なる改正に対応し続けますが、このままでは会社が立ち行かなくなるという不安が現実感を増してきます。
◆これからを考えた時に出会いたかった人に出会える、僕は運がいい。
不安なままで進み続けることに限界を感じた小川さんは、会社の外に何かがあるのではないか、と、さまざまな勉強会や交流会に出かけるようになります。
そこで出会ったのが、経営者でありながら、夢を持ち続ける人生の先輩たち。
なんのわだかまりもなく、失敗も成功も話してくれるすごい人たちに出会うことができて、とても勉強になり、刺激になったと言います。
「最初はみなさんのすごい話を聞いて焦ったんですね。うちももっと売り上げをあげて大きくなるぞって、突っ走っちゃったんです」仕事では自分が引っ張っていこうと突っ走って、後ろみたら、誰もついてきてくれて無かったんです。しかも社員に、『私たちのこと、信用してませんよね?』まで言われちゃって。もう、猛省です。そこからは社員のみんなを信用していることをもっと行動で示そうと、意識改革です」。
それからは、社員の声を聞き、全て任せる体制に大改革。何かあったら責任は取るからやってみて、と、前を突っ走るのではなく、社員の背中を守る体制に。
退職者の多かった頃から考えるとほぼ退職者が出なくなり、目標設定を自らできる、思考する会社に変革。
小川さんは「運がいいんです」とおっしゃいますが、小川さんの聞く力と、行動力あってこそではないでしょうか。
◆夢を笑顔で語れる人になりたい。
経営者でありながらも昔から持っている夢を諦めず、楽しそうに話す人たちに衝撃を受けた小川さん。「楽しそうなんですよ、夢を話せる方々って。仕事も私生活も楽しめてらっしゃる」。
一度潰えたプロレスのリングに上がる夢が再燃するのに時間は掛からなかったようで、今はまたトレーニングに励む日々。
「3年後にはリングに立つのが今の夢なんです」。
楽しそうに話す小川さんは、憧れだと話す先輩方と同じ場所に来ていると感じました。
◆けむっし~のように、前に進む
ところで、このキャラクターは?
「毛虫のけむっし~です、当社のキャラクターです!前にしか進まない、退かない生き物なんです。毛虫は昔、武将の甲冑にも採用されたりしているんですよ」。
社員の職場環境を整えるだけでなく、働く上で楽しいことを見つけてもらえるよう、いろんなイベントや試みを行なってきた小川さんの生き方こそ、まるで前に前に進み続けるけむっし~のようです。
仕事でも私生活でもリングに上がるという夢を話すようになってから、いままで感じていた人との壁や隔たりが消えたようにみなさんが受け入れてくれるようになったという小川さん。
「今の夢を叶えたら、また次の夢を見つけます!」
夢を追いかけながら、ビジネスで求められるものを着実に捉え、前に進み続けていかれるパワーをひしひしと感じました。
(取材・構成/TORQUE T.Teratani)
会社概要
株式会社ケイエムシー
本社所在地:大阪府堺市西区宮下町9-22
TEL:072-275-8710
http://kmc-d.jp/