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お惣菜といえば、コロナ禍のSNSでも話題になった、ポテサラ騒動。子供を連れたお母さんが見知らぬ男性から言われた心ない一言が騒動となりました。令和の時代に時代錯誤じゃないかという論争に。20年以上にわたってご家庭で食べていただけるお惣菜を作り続けてこられた加藤社長の「食」への思いをお伺いします。
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◆なんでもしたがり、知りたがり。
アークフーズ株式会社は手作り惣菜・弁当の製造、なな菜での店頭販売、会議やイベントなどの仕出し弁当やご家庭へのオードブル配達を手がける会社。2003年に、新金岡の駅前商業施設で手作りお惣菜のお店をオープンさせたことから始まりました。
一店舗目をオープンさせるまでに長く飲食業界でお仕事されてきたのかと思いきや、会社を始められるきっかけを伺うと、「いえいえ、ほんと成り行きなんです。当時はフラワーデザインの会社に常務として勤めていました」。と、意表をつかれるお返事。
専業主婦として家庭に入っておられた加藤さん、「子供も少し大きくなって時間が出来て暇だし習い事でも行こうかと思ってね」。と、ラタン編みの教室に通い出されます。
「教えてもらい出したらすっかりハマってしまってね、お花を生ける籠を作ったりしていたんですけど、いつのまにか教える側になっちゃって。だんだん集まる人が増えてきて、みんなで展示会やったり、百貨店の催事に出させていただいたりね。懐かしいわ、ふふ」。
「なんでもしたがり、知りたがりなんです」。いたずらっ子のように微笑みながら当時のことを教えてくださいました。なんと百貨店にもコーナーを設けておられたそう。その時期に染色やヨーロピアンフラワーデザインも学び、一級技能士も取得。身につけた技術でパーティでのお花設営やおもてなしの事業を始められます。
「当時はいろんな美術品や贅沢なものを見せて頂きました。目の肥やしになりましたね」。
当時はバブル全盛期、華やかな集まりも多く、10年間続けたフラワーデザインの会社にはいろんな方との出会いがありました。その中でお知り合いになった食を扱う会社の社長さんがある時、『これからはバブルも弾けて女性が社会進出する。高齢化、個食化も広がっていき、家族が団欒するというのは減っていくだろう』。と話されたのを聞いて、「とても共感しました。私は衣食住の内、衣と住はやってきてたから、食もおもしろそうやなって。お料理も好きでしたしね。よし、自分でもやってみようかなと」。
ふとした気付きをきっかけに、やってみようかと思うトライアル精神、感服です。
◆初めての業界で、初めての立ち上げ。
一ヶ月ほど企業研修として四国の会社でシステムを学び、研修先の社長からは『向いていない』と言われたにもかかわらず、一店舗目をオープン。思いがけず大皿式の新しい売り方もお客様のご支持を頂き次々と出店の運びとなりました。「五年間お世話になって、当初の役割は果たせたかなと思い、退職のお話させてもらってたんです」。そんなタイミングに湧いて出たのが、ご自分で会社を立ち上げるきっかけとなる、新金岡駅前にあるスーパー内での出店話。
加藤さんは会社に報告するが、当時の会社のブランドイメージとは違うということで出店は行わないという方針に。
「三顧の礼じゃないですけど、お断りしてもほんとに何度もお話いただいて、だんだん条件も良くなっていくんです。会社には報告を何度も繰り返してやっとGOサインが出ました」。
しかし、いつまでたっても引き継ぐ担当者が決まりません。退職時期は近づき、迫ってくる新店の出店予定、「このままではいろんなところに迷惑をかけてしまうと思ってね、冗談半分うそ半分、自分でやらしてもらえますか。って会社に言うたんです。社長の広いお心でOK頂きました」大胆発言その二ですね(笑)
「会社立ち上げた時は大変だったけど楽しかったですね。好きにやれたんで。今までやってきたことが全部役に立った」。
◆コンセプトは、テーブルのないレストラン。
会社創立から一店舗目オープンまでたったの三ヶ月少し、よく間に合いましたね??
「お前がやらな誰がやんねん。って状態で。世間知らずなのが良かったのかな(笑)、一店舗目では、前菜、サラダ、煮物、揚げ物やデザートなど常に百種類くらい並べてね、ご指導頂いていたコンサルタントの先生いわく『テーブルのないレストラン』っていうコンセプトでした」。
ラインナップを考えるとフルコース、まるでデパ地下をぎゅっと凝縮したお店造り。
昭和町の町家に二店舗目を構え大皿料理での提供を、岸和田や富田林にも店舗展開し、店内飲食にも挑みます。パーティの仕出しやお弁当の注文も増え、百貨店にお惣菜やお野菜を納品することも増えていきました。病院関係や学校関係から注文を頂くことも多くなり、クチコミで販路は広がっていきましたが、店内調理で保存料などを使わないひと手間かけた手作りだからこそ日持ちしないという問題点がありました。
「保存料を入れて消費期限を延ばすか、という検討もしたんだけど、お客様に日々来て頂いて、大皿に盛ってあるお料理をお好きなだけ選んで食べて頂けるのがいいなぁと考えて、保存料入れるのはやめました」。
確かに、おうちで食べるお料理に保存料は入ってません、やはり基本はお惣菜やさんなんですね。
◆知りたがり精神は今も継続中。
食に関わるようになった頃、より食について知識を増やしたいと考えた加藤社長。
自ら懐石料理の教室に通い、マクロビオティックや薬膳漢方なども学んでこられたそう。
「ちょっと待ってね」。と出してきてくださったのは高麗人参、陳皮やなつめ。学び続けていらっしゃるだけに、すらすらと説明してくださいます。
「懐石料理はもう20年以上続けてます。今の時期ならおせち習ったり。かまぼこもすり身からやるから、丸一日かけて仕上げていくんですよ」。「えー!」取材陣一同騒然です。驚く私達に「一からつくるとおいしいんですよ?(笑)」そりゃそうでしょう!なな菜のお惣菜やおせちへの期待感も上がります。
「この仕事させてもらって思うことは、知れば知るほど怖くなる。口に入れるものを作るっていう責任に改めて気づかされましたね。すごく大事なこと」。
その責任を全うするために、今も学び続けてるんですね。「大病もしたけど、生かされてるってことは、お役立ちしなさい、喜んでもらいなさいって言われてると思ってる。作ったものを食べるのも楽しみやしね(笑)」食というものに真摯に向き合いながら、美味しいお料理をたくさん食べてこられた実績ある笑顔が弾けます。
◆食べることは命。
「うちのコンセプトは“食は命のもと 料理は愛の形”としています。料理はからだも作るけど、ココロも作るでしょ。食べることは大切なこと、それで幸せになってもらえたらありがたい」。普段なんの気なしに口にしている食べ物ですが、心身ともに影響していると考えるとより大事に感じますね。
「食で顔も変わるし、肌も変わる。性格だって変わる。食べるものでみんなの命が出来上がってるから」。そうおっしゃる加藤社長、古希を迎えてらっしゃるとは思えない肌艶です。なな菜では、店内調理にはできる限り化学調味料を使わず、無農薬野菜を仕入れるために農家さんに直談判までされてきたそうです。
◆楽しみながらやさしさを伝える日々。
コロナ禍の影響はやはり大きいようで、「今は大変しんどいです。」しかし間髪入れずおっしゃったのは、ともに働く人たちと提供する食への責任でした。
「からだにやさしくて、ココロにやさしい。人にやさしい食の提供がこれからより大事にされると思ってます」。
大学監修の栄養バランスが整ったお弁当開発や、惣菜容器を工夫し続けている加藤社長。今後もまた新しい展開をお考えのようです。
「なりゆきでなんでも仕事させて頂きましたが、自分の好きなことしているから楽しい。こうやって仕事させてもらって、体動かせてありがたいし、食を仕事にできて良かった。」
“したがり知りたがり”精神はまだまだ衰えることなく、健康であることの大切さをお仕事で表現しつづけておられます。
(取材・構成/TORQUE T.Teratani)
会社概要
アークフーズ株式会社
本社所在地:大阪府堺市北区新金岡町2-5-8
TEL:072-275-7831